昨今、ますますその活躍の場を広げている“VR技術”。
VRといえばゲームを連想される方も多いでしょう。
実はゲーム以外にも、観光や医療、ショッピングに航空業界など、“BtoB領域での活用についても、VR技術の展開は驚くほど進んでいます”。
今回、ご紹介する“建設業界”もその1つです。
様々な業界でVR技術の活用は進んでいますが、その中でも“建設業界はVR技術との親和性が特に高いといえます”。
なぜ親和性が高いのか。詳しくは後述しますが、“安全”と“訓練”が大きなキーワードです。
本記事では、“建設業界から見るVR活用事例をご紹介します”。
活用事例から見える“VRを用いた訓練や広告方法”について、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
※【VRとは】
バーチャル・リアリティ(Virtual Reality)の略で、仮想現実のこと。
コンピューターなどによって、本物のように作られた仮想空間を体感できる技術のことを指す。VR技術によって作られた空間や映像を見るために、HMD(Head Mounted Display)と呼ばれる「頭部に取り付けるゴーグル」のような装置を用いることが主。HMDを装着することで、VR技術によって作り出された仮想現実を体感することが可能。
建設業界におけるVR活用効果
はじめに、“建設業界におけるVRの活用効果”について述べていきます。
・建設業界とVR技術は、“なぜ親和性が高いのか”。
・建設業界で、“VR技術はどのように活用されているのか”。
この2点について、述べていきます。
本記事の導入でも申し上げましたが、建設業界におけるVR活用でポイントとなるのは、“安全”と“訓練”です。
建設業界といえば、“工事における事故など危険がつきものです”。巻き込まれ事故や転落事故など、様々な事故があげられるでしょう。
実際、厚生労働省が発表している「平成 30 年労働災害発生状況の分析等」※1という資料を見ると、業種別の“死亡災害の発生は、建設業がもっとも多い結果”となっています。
だからこそ、建設業界ではいかに“安全に工事を進められるか”、“安全に工事をするための教育訓練を実施できるか”がとても大事です。
そして、この“安全な工事作業”と“質の高い訓練”を実施する上で、VR技術が役立っています。
VR技術によって作られるコンテンツ(以下、VRコンテンツ)は、“遠隔での機械操作”と“精度の高い安全訓練”を実現します。
次では実際の事例をもとに、VRコンテンツの活用方法をご紹介します。
※1参考資料:平成 30 年労働災害発生状況の分析等
URL: https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000555711.pdf
建設業界におけるVR活用事例
ここからは、実際の建設業界における活用事例をもとに、VRコンテンツの活用方法についてご紹介していきます。
東急建設
最初にご紹介するのは“東急建設”です。
東急建設では、“安全訓練”と“業務体験”でVRコンテンツを有効活用しています。
まず“安全訓練”についてです。※2
東急建設は公式Webサイトの「お知らせ」にて、VR技術を活かした「体験型安全衛生教育システム」の開発について発表しています。
このシステムは、「災害事故を体感することで、事故発生防止のために、どう行動すれば良いかを学習すること」を目的としています。
このシステムのポイントは、あくまでも“現場作業を完了させることをゴールとしていること”です。
それは一体どういうことでしょうか。
体験者はVR映像内で、ネットの取り付けなど高所における実際の現場作業を行います。
しかし、この作業現場にはきちんと確認しなければ、危険なポイントがいくつも用意されています。加えて、制限時間つきです。
体験者が危険なポイントに気づかなかったり、焦って確認作業を横着したりすると、転落などの死亡事故に繋がってしまうという「人間の行動心理に影響を及ぼすストーリー展開技術」をこのシステムでは取り入れています。
つまり、災害が起こるまでの流れを単に映像として見るのではなく、“現場作業を疑似体験する中で災害体験ができるというものです”。
そういったストーリー展開やリアルな災害体験は、VRコンテンツにおける没入感があってこそ。VR技術を有効活用している事例の1つです。
次に“業務体験”です。※4
こちらは、トランスコスモス株式会社の技術支援のもと、VR技術を用いて作成されたスマートフォン用のアプリです。このアプリの名称は「東急建設/新入社員の一日VR」です。
その名の通り、“新入社員の1日を体験できる内容”となっています。
新入社員として出勤し、朝礼や打ち合わせ、測量の業務など、実際の仕事をリアルに体験することができます。
先ほどご紹介した「体験型安全衛生教育システム」では、社内教育が目的でした。
ですが、こちらのアプリでは、“建設業界への志望を考えている学生に向けた広告”となっており、人材獲得を目的としています。
VR特有の360度映像を活かした動画コンテンツとなっており、視聴者はリアルに自分がそこで働くイメージを持てるのではないでしょうか。
また、この動画はVRゴーグルがなくとも、映像は視聴できるようになっています。
その分、様々な人が視聴と可能となっており、多くの人々に企業の魅力を訴求できるでしょう。
大成建設
次にご紹介する活用事例は“大成建設”です。
大成建設のVR活用事例も、建設技術に非常に上手く落とし込んでいる例です。
大成建設のVR活用は、主に2つ。“重機の遠隔操作”と“建築物のシミュレーション”です。
“重機の遠隔操作”ですが、大成建設は“臨場型遠隔映像システム「T-iROBO® Remote Viewer」”を開発しました。※5
このシステムは、“遠隔地から安全に、重機を操作することを可能とするシステム”です。
遠隔地にてHMDを装着し、現地の映像を確認しながら重機を操作します。
これにより、災害対応や高放射線環境下など、危険地帯での復旧工事において、遠隔地から安全に作業を行えます。
これまでも遠隔地から映像を見て、重機を操作することはできました。
ただ、従来の映像は単眼カメラのため、距離感を把握することができませんでした。
しかし、このシステムでは、人間の目に相当する2つのカメラを利用しているため、距離感を把握することが可能です。
また、魚眼レンズを使用することで、前方の広範囲映像を取得。HMDが頭の動きと連動しているため、見たい方向を自由に見ることが可能。
これらの仕組みにより。“まるで実際に運転席に乗り込んでいるような感覚”で操作を行うことができます。
“現地にいなくても、まるでその場にいるかのような体験”というVRの強みを、安全性に転換している活用事例です。
2つ目の“建築物のシミュレーション”ですが、これは「Hybridvision」という“建築デザインのシミュレーションおよび建築性能を総合的に予測評価するシステム”です。※5
従来の建築デザインは、図面や模型などを利用して行われていました。
ですが、実際には高さのある建築物を、平面図のような二次元情報で表現しているため、情報の不足や精度に劣るということがありました。
その情報の不足を埋め、精度を上げるために開発されたのが「Hybridvision」です。
VR技術を用いて、建築デザインを立体映像に作成。それを大型スクリーンに投影することで画面内のへの没入感を生み、仮想体験が可能。
これにより立体視が可能となるため、“建築物の解放感やスケール感などを確認することができます”。
また、仮想空間の強みを活かして、地震発生時の影響を再現したり、周辺市街地の情報を組み合わせて、近隣への温熱効果の有無なども検証することを可能にしています。
このシステムは、あらゆる状況を再現できる仮想空間の特徴を、建築物のシミュレーションに応用した活用事例です。
建築物のような“高さ=三次元的要素が求められるもの”と、“VR技術の相性の良さ”がよくわかる活用事例です。
ご紹介したシステムは、大成建設の「公式Webサイト」および「大成建設技術センター報」にて発表されています。
※2参考記事: VR ゲームテクノロジーを活用した体験型安全衛生教育システムを開発
URL: https://www.tokyu-cnst.co.jp/topics/upload/2922_20170824VR.pdf
※3参考記事:VRの臨場感で『新入社員の一日』を疑似体験 建設現場の施工管理業務を体感できるアプリを開発
URL:https://www.tokyu-cnst.co.jp/index/download/3112/inline/20180612_newslettervr.pdf
※4参考記事: 臨場型遠隔映像システム「T-iROBO® Remote Viewer」
URL: https://www.taisei.co.jp/ss/tech/C0140.html
※5参考記事: 最先端 VR(バーチャルリアリティ)システム「Hybridvision」の開発
URL: https://www.taisei.co.jp/giken/report/2009_42/paper/A042_053.pdf
まとめ【VRで訓練の質を高める】
建設業界におけるVR活用事例としては、以上となります。
いかがでしたでしょうか。建設業界とVR技術の親和性が、お分かりいただけたかと思います。
“どこにいても、まるでその場にいるかのような没入感”が特徴のVRコンテンツ。
遠隔で体感できるVRコンテンツは“場所の制約から解放”し、本物のような映像体験は“訓練の質を高めます”。
特に今回ご紹介した訓練や研修へのVR活用は、建設業界のみならず他の業界においても積極的に活用されています。
有名なところでは、アメリカの大手スーパーマーケットチェーン「ウォルマート」が導入しています。
あらゆる状況への対応研修に加え、研修結果を踏まえた人事評価などにも応用しているそうです。
建設業界という視点ではなく、“教育や研修という視点”で捉えると、全ての業界においてVR技術は活用可能です。
なぜなら、“あらゆる業界で教育や研修は必要だからです”。
VR技術を用いれば、わざわざ遠いところから研修施設に出向く必要もなければ、指導のための人員を用意する必要もない。それどころか、従来よりも質の高い研修を実施できる。
“時間的にも経済的にもコストを削減できるのが、VR技術を用いた教育や研修です”。
企業の教育や人事担当の方にとって、本記事がVR技術を用いた教育方法の参考になりましたら幸いです。
最後に、研修やトレーニングにおけるVRの制作・導入は、より高品質で効果的な利用のために、専門家に依頼するのが良いでしょう。
ロマンテックジャパンは、高品質・低価格で、産業向けのVR制作・導入を行っています。研修やトレーニングにおけるVR制作・導入の際は、ぜひロマンテックジャパンまでご依頼ください。